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― 黒スーツと子供 ―

2022/11/28
文字数:988文字

31【黒スーツと子供】

夢を見た。

気がつくと2階建ての公民館にいた。
見知った顔がちらほらと見える。
文化祭のようなイベントらしく、廊下や部屋に飾り付けがされている。
絵や写真なども飾られて、人々が楽しげにそれらを眺めている。

奥に進むと、揉めている声が聞こえてきた。
「こんなのつまらない」
「文句を言うなら、出ていけ」
「わかった。出ていくよ!こんなところ」

7・8歳ぐらいの子供が、部屋から飛び出してくるのが見えた。
窓の外は真っ暗だった。気がつくと夜になっていたらしく、このまま外に出すのは危ないと思った。
子どもを追って、外へ出たが全く追いつけなかった。
一緒に追いかけた人も諦めて、公民館へと戻った。

公民館にいる人達は少なかったが、子供と母親のやり取りを見ていた人たちだった。

やがて、子供に追いついたらしい人が戻って来た。

「ダメだ。あれはヤバい」

と話し始める。子どもは怪しい人達が集まる場所へと入って行って、手が出せなかったとのこと。
それでも、子供を取り戻した方がいいのではと話しあった。
その場に母親はいなかった。

子どもが、怪しい黒スーツの軍団を連れて、やってきた。

「この人達が、話があるって」

母親は「知らない勝手にしろ。戻って来なくていい」と取り合わない。
私たちは顔を見合わせてしまった。放っておくには、あまりにも幼い。
警察を呼んだ方がいいと、誰かが言った。

子どもが「警察を呼んだら、もっと、危ないよ」と、にっこりと笑った。

意を決して、黒スーツがいると言う外に出ると、白いバンが道路に止まっていた。
ドアは全て開け放ってあるが、窓部分には黒いカーテンのようなものがひいてある。
中は明るく照らされていて、数人の足元だけが見えた。
他の黒スーツは車の周りで、周囲を見張っているようだった。

車の前にいた黒スーツが話し合いは車の中で、行うという。
後ろを振り返ると、皆、公民館の窓を開けてこちらを見ていた。

既に開いているドアを指さして、黒スーツに聞いてみた。
「なぜ、ドアを開けているの?」
「風通しを良くするのは、基本だろ」

話し合いは、「子供に危害は加えないから、家にも戻さない」と言うものだった。
あの母親が、子供をまともに育てられるとは思わないが、そっちの世界もまともでいられるとは思えない。

私は悩んだ揚げ句、『保留』にした。

車を降りると、遠くでパトカーの音がして誰かが警察を呼んだのだと思った。

と言う辺りで、目が覚めた。




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