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夢を見た―――
悪魔の夢。
崖が真上に見える。
あの夢の続きかな。
体のあちこちが痛い・・・
私は空を見ながら思った。
いや、実際にそう思ってるのはこの体の持ち主だろう。
あお向けになった身体は動くことも出来ないようだった。
あれ?
この身体の思考は何も感じられない。
死んでるのかな?
サク サクッ
草を踏む音が聞こえる。
誰か近づいてくる?
人影が、視界の端に見えた。
男の人?
まさか、村人じゃないでしょうね・・・
ピクンッ
この身体の手が動いた。
(誰?)
あ、生きてたんだ。
近づいてくる人影は、どうやら村人ではない。
若い男の人だ。
「その身体では、もう死ぬしかないな」
その人は冷ややかにそう言った。
助けてくれるのかと思ったら、何てこと言うのよ。
(死ぬ!?)
「イヤか?私にその身を預けるなら助けてやってもいいが・・・」
助けてくれるのなら最初からそう言いなさいよ!!
「永遠の罪を背負う覚悟があるなら」
???
なんの事?
(!!)
この身体の持ち主は意味がわかったようだ。
(・・・・・・)
何かを考えてる?
何迷う事があるのよ!!
助けてくれるって言ってるんだから、助けてもらいなさいよ!
―――――――――――
「た・・す・・・・・け・・て・・・・・」
声を振り絞ってそう言った声が聞こえた。
「よかろう」
そして、その人はこの身体の唇に自分の唇を・・・
キスーーーーー!!!!
ちょっと、私のファーストキスどーしてくれんのよ!!
ま、いいや。これ夢の中だし
じゃなくて、この身体確か男じゃなかった?
・・・・・・・・
考えない事にしよう・・・・
この身体は、力つきて意識がなくなってゆく。
あれ、 この人の目、誰かに似てる。
誰だっけ?誰かに・・・
だ・・・れ・・・か・・・に
――――――――――!!
目が覚めた。
「おい!!また遅刻する気か」
目の前に目があった。
「きゃああああぁぁぁぁぁ」
と思ったら、お兄ちゃんの顔だった。
「な、なんで、部屋に入って来てるの!?」
いつもなら、ちゃんとノックしてくれるのに・・・
「なんでって、お前が起きてこないからだろ。まっ遅刻したいなら別だが」
「遅刻?」
私は、傍にあった時計に目をやる。
げ!!
やばい・・・。
あと5分で、始業のベルが鳴る。
慌てて着替えをすませる。
そして、階段を駆け下りる。
そのまま、玄関へ
「いってきまーす」
バタン
あー今日も完璧に遅刻だ!!
学校の帰り道。
今日は友達と一緒だった。
「華雪、今日も間に合わなかったね」
「あの夢見るようになってから、起きられなってる」
そうすべて、あの夢のせいだ。
「あの夢って?」
「変な夢。私が、男の子になってるの」
そう、大体あいつは誰なのよ。
「なにそれ?」
あ!!
私の視界に、あの人が入った。
そう、彼に会ってから、あの夢を見るようになったんだ。
「華雪?」
「ごめん、用事があるから。じゃね」
私は、そう言うと彼のほうにかけだしていた。
「え?ちょっと、華雪!」
友達の声が聞こえたが、気にせずに彼の後を追いかけた。
彼は、人並みをぬってはやばやと歩いてる。
速い・・・。
角を曲がったところで見失ってしまった。
ハア つ、疲れた。
あれ?
ここ、彼を見た公園だ。
あの日、彼は何をしていたんだろう?
「俺を捜していたのか?」
急に後ろから声がした。
ふり返ると、そこにいたのは彼だった。
誰かに似てる?
「あ、・・・」
彼だ!
この人の瞳が、夢の中の助けてくれた人の瞳に似てる。
「どうした?俺に聞きたい事があるんだろう?華雪」
!!
「どうして・・・。私の名前を?彼方は誰?」
どうしてだろう?
彼の瞳を、ずっと前から知ってる。
「俺は、ウォルト。華雪、君の・・・」
すい込まれるような青の瞳。
「華雪!!」
公園の入り口のほうから声が聞こえた。
え?
「お兄ちゃんなんでここに?」
ずかっずかっ
お兄ちゃんは目の前の彼を睨む。
「帰るぞ!」
グイッ
有無を言わさずに、私の腕を引っ張る。
何?なんでそんな怖い顔してるの?
「痛いよ!何なのよ一体?」
家の中に入って、やっと腕を放した。
「いいか!あいつには近づくな!!」
お兄ちゃんは、怒鳴るような声でそう言った。
「ちょっと、何でお兄ちゃんにそんなこと言われなきゃならないの!!」
私もつい、怒鳴り声になってしまう。
「あいつは、お前の・・・」
私の?何
「いや。とにかく近づくな。あんな得体の知れない奴なんかに・・・」
慌てて言いなおしたような口調で、お兄ちゃんはそう言った。
何なの?
彼が私の何?