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― 海 ―

2023/09/02

1:海

文字数:約457文字
 青い青い星の上の内緒話。
 ほら― 聞こえますか?

――――――――――――†――――――――――――

「きれいね」
 波の上を滑る風は何処までも遠く続いていく。
 日の光がキラキラと海面を照らし出した。
「ああ……」
 声はすれども姿は見えない。
「あの混沌から、また命が産まれるなんて」
 悩みすらないように
 海は広く広い―
 迷う事すらないように
 空は高く高い―

「……」

 答えはない。
 しかし何を考えてるのかは容易に分かる。
「命が途切れることはないわ」
 頬を風がでる。
「あの子の命もいつかどこかに繋がっている」
 思い出すのは―
 この星で消えて行ったたった一つの想い。

「どこへ繋がってると?」

「さあね」

 意地悪く私は答えた。
 ふっと気配が消えた。
「まあ、あんたの気持ちも分かるけどね」
 誰に言うでもなく呟くように吐き出された言葉。
 消え去った想いはもう二度と戻らない。
 輪廻なんて慰めはただ滑稽こっけいでしかない。

 だって私達は

「知りすぎてる―」


 さざ波は寄せては返し、何も知らない。
 雲はただ浮くだけで、何も知ろうとしない。

 額に手を当てたまま俯く私の想いなど
 知る由もない―




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