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― 夕日 ―

2023/09/03

7:夕日

文字数:約505文字
 煌めく夕日。
 遠くを見つめる瞳に― 何が映る?

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 男はただじっと夕日を見詰めていた。
 風に舞う砂埃。
 赤く染まる大地。
 微かに光る空の星。
 遺跡の中に入るでもなく、調べるのでもなく
 遠く彼方に思いを馳せているのか。
 遺跡の残骸に腰掛けピクリとも動かない。
 ―何をしているのか?―
 そう思っても声をかけることさえいけないような雰囲気だった。

 遺跡から人の気配を感じ出てきた私はどうしようもなく
 ただ、それを見ているしか出来なかった。
 目をそらす事が出来ない程不思議なものを感じたからだ。

 風が一片彼の髪を揺らす。

 生きているのか?
 死んでいるのか?
 それは生気を感じさせない。
 いや、死の空気さえも無い。
 まるで、そこにそびえる大樹のように思える。

 自然にそこにある―

 ただそれだけ。

 どれだけそうしていたのだろう?
 数時間のはずだが、私には何日にも何年にも思えた。
 それほどに彼が印象的だった。
 気づいた時には空に星が瞬き、月が私を見下ろしている。

 私は遺跡に入り、いつもの様に薔薇のお茶会をする事にした。

 彼は― 私の待ち人だろうか?
 それとも獲物だろうか?

 頭をかすめた想いはふんわりとした薔薇の香りに消された。




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