7:夕日
文字数:約505文字
煌めく夕日。遠くを見つめる瞳に― 何が映る?
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男はただじっと夕日を見詰めていた。
風に舞う砂埃。
赤く染まる大地。
微かに光る空の星。
遺跡の中に入るでもなく、調べるのでもなく
遠く彼方に思いを馳せているのか。
遺跡の残骸に腰掛けピクリとも動かない。
―何をしているのか?―
そう思っても声をかけることさえいけないような雰囲気だった。
遺跡から人の気配を感じ出てきた私はどうしようもなく
ただ、それを見ているしか出来なかった。
目をそらす事が出来ない程不思議なものを感じたからだ。
風が一片彼の髪を揺らす。
生きているのか?
死んでいるのか?
それは生気を感じさせない。
いや、死の空気さえも無い。
まるで、そこにそびえる大樹のように思える。
自然にそこにある―
ただそれだけ。
どれだけそうしていたのだろう?
数時間のはずだが、私には何日にも何年にも思えた。
それほどに彼が印象的だった。
気づいた時には空に星が瞬き、月が私を見下ろしている。
私は遺跡に入り、いつもの様に薔薇のお茶会をする事にした。
彼は― 私の待ち人だろうか?
それとも獲物だろうか?
頭をかすめた想いはふんわりとした薔薇の香りに消された。
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