15:天空少女たちのバレンタイン
文字数:約811文字
甘い砂糖菓子。たまには少し― 息抜きに?
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「何?」
差し出されたそれを見て私はきょとんと聞き返した。
「チョコレート。頑張って作ってみました♪」
満面に笑みを浮かべてルウナが答える。
「そーじゃなくて。何で私に?」
「大丈夫。セイアにもあげるけど、本命はカエラだから☆」
「……男にあげる物じゃなかった?」
話のかみ合わない事に頭痛を感じる。
ルウナの目が真剣そのものって事にも……
「えーだって、そこら辺の男よりカエラの方が素敵だよ~
勉強もスポーツも誰にも負けてないじゃない」
「ありがたく貰った方がいいですよ」
隣から聞いていたらしいセイアが口を挟む。
「たまには本を閉じて息抜きも必要ですし」
「セイアにもハイこれ。で、これが私の分~」
微笑みながら受け取るセイアに子供のように笑うルウナ。
「たまにはね」
それを見つめつつ、パタンと本を閉じる。
「お天気もいいから、お庭でお茶にしよ♪」
一人で先に行ってしまったルウナを追い、立ち上がる。
「かわいいですね」
「?」
振り返った先に、チョコレートの小箱を持ったセイアがいる。
「ほら、可愛らしい綺麗なラッピング。
カエラさん気づきました?ルウナさんの手が荒れてる事」
チラリとセイアが私を見据える。
「え?」
「一生懸命作ったと思いますよ」
それだけ言って傍を通り過ぎて行った。
庭に出るとルウナが膨れっ面で待っていた。
「おっそーい」
「ごめんって。それと、ありがと」
後半は小さな声でそっとルウナの耳元で言ってみる。
「うん」
少し驚いた顔をして、それからすぐにニッコリと笑った。
「早く行こ!」
ルウナの手に引っ張られて着いた先にあったのは―
「何よ。これ」
「えへへ。ちょっと失敗しちゃって、
捨てるのもったいないし食べようよ☆」
どっさりと山盛りになった
「こんな息抜きもいいんじゃないですか?」
そう言ったセイアの笑顔が引きつっていた。
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