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― 出口がない ―

2022/05/12
文字数:1204文字

3【出口がない】

夢を見た。

コンサートに行った。
会場はどこかの小さなホールのようだった。
入り口から階段を上って、会場へと向かう。
人はまばらで、それほど人気があるわけでもないみたいだった。

ふと、足が止まる。
『私、これを聞きたいんだっけ?』
迷いが生じた。
……何か違う。
そう感じて、来た道を戻ろうとする。
どこだっけ?
広い建物ではなかったと思う。
階段を一つ昇って来たからここは二階のはず。
後ろにあったのは、ちょっとした空間だった。
廊下よりも少し広めのその空間は|衝立《ついたて》のようなもので区切られている。

記憶の中では、そこは廊下でそこを通ってきたような気がする。
けど、廊下はない。
その空間に人が数人たむろってるだけだった。

しょうがないと思って、先に進む。
どこかに階段があるだろうと思って進んでみるが、一向に階段が見当たらない。
どこへ進んでも廊下の端は広めの空間になっていて、衝立がある。
衝立に背を預けて廊下を見つめると、壁だと思ってた部分が開いて人が出てきた。
扉だった。
その人が行くのを見て、私もその扉に手をかける。
ガチャッと音がしたきり動かない。
ぐっと力をかけても開かない。

鍵がかかっていた。
出られない。

もう一度廊下を歩く。
突き当りに衝立の空間が出てくる。衝立を押してみる。
意外とあっさりと衝立は倒れた。
踏み倒して向こう側の空間へと進む。
同じような廊下が続いて、やはり階段は見当たらない。

扉も見つけたけれど、鍵がかかっていた。
ふと辺りを見回す。
人はいる。廊下や広めの空間にたむろしている人達。
彼らがどこから来ているのか。どこへ行くのか。わからない。

人が扉を通るのを見かけた。
もう一度、扉を開けてみようとする。
意外にあっさりとその扉は開いた。
扉の先には広くて人気のない階段が上下に伸びていた。
私は下に続く階段を選んで進んだ。

階段の先はがらんとした空間だった。
一瞬、戻った方がいいかも知れないと思った。
人気がない。電気もついてなくて薄暗かった。
片方は体育館のような場所で、片方は下駄箱がある出入り口だった。
前方は廊下だけれども、扉がある。その先は分からない。
体育館に人はいないようだった。
出入り口に手をかけてみたけれど、鍵がかかって開かない。
廊下の扉に手をかけてみる。
鍵がかかってると思ったそれは、苦も無く開いた。


扉の先はたくさんの人がいた。
ほとんどが、体操服のようなものを着ていたけれど、弓道の胴衣のよなものを着ているひともちらほらといる。
何かの大会が行われてるみたいだと思った。
人の間を通り抜けて、先へと進む。
先ほどの薄暗がりとは違って、廊下の窓が大きく外の光が沢山入ってきている。

やがて、また出入り口を見つけた。
裏口のようだったけれど、構わずにそこから建物の外へ出た。



外は眩しい光に溢れていた。
建物から出たことにホッとしつつ、足を進める。
道路を歩きながら、ある事に気が付いた。


『私、どこへ行けばいいの?』


その辺りで目が覚めた。





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