編集

― 角のある人 ―

2022/05/12
文字数:743文字

30【角のある人】

夢を見た。

西洋風の建物の中に、私はいた。
辺りには数人の『角のある人』がいる。

「奴らが来る。逃げなきゃ」

誰かがそう叫んで、一斉に走り出す。
私もその声に弾かれて、走り出していた。
長い廊下が続いていた。それをただ、真っすぐに走った。
細長い建物から出ると、緑の芝生が広がっていた。
建物から建物へ一本の道のようにレンガが張られている。

私は次の建物へと入った。

後ろからは、数人の人が追いかけてくる。
建物に入ると、階段が見えたので、階段を駆け上がって2階へと向かう。
どこへ行けばいいのかは分からないし、これが何なのかもわからない。

2階の廊下の窓から、また同じような細長い建物が並んでいるのが見えた。

「何で逃げるんだ?」

後ろから声がして、私は走るのをやめた。
それは私を追っているのではないと感じたからだ。

「追いかけているのは、お前じゃない。ここに奴らはいないんだな」

私を追いかけてきたものは、くるりと向きを変えて、他の人たちを探し始めた。
私は何が何だか分からずに、とりあえず、建物を出て、外に行こうと思った。
外に出て、芝生の先の建物に入って、また外に出る。

と、そこに広がるのは建物ではなくて、運動場のような広い場所だった。
階段がついていて、運動場は低くなっている。
私がそこへ行ってみると、『角のある人』が捕まっている。
追いかけていた者たちが周囲を取り囲んでいる。

彼らに話を聞くと追いかけていた人達が、悪意でも敵意でもなく、
『角のある人のため』にそうしているらしいという事が判った。

私は、再び建物の中に戻って、『角のある人』を説得して回ることにした。
『角のある人』はただ怯えているだけということが、話してみると判った。

でも、なぜ……この建物は暗いんだろう。

と思ったところで、目が覚めた。




<<前へ