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― 精霊使いと精霊1 ―

2023/09/03

3:精霊使いと精霊1

文字数:約1041文字
 青い青い水晶玉。
 それが映し出すものは― 何なのでしょう?

――――――――――――†――――――――――――

 彼女はぼんやりとした青い瞳を私に向けた。
 寝ぼけているような声で彼女は言う。
「な……に?」
 むっくりと起き上がり、青い髪がさらりと揺れた。
「何って。こっちが言いたいわ。そんなところで何してるの?」
 ……。
「ここ?……どこ?」
 ゆっくりペースで彼女は全く別の事を聞く。
「……神殿の奥深くよ。正確には太古のだけどね」
 全くのマイペースぶりに苛つきながらも私は答える。
「そう?……」
 ……。
「ちょっと!こっちの質問にも答えなさいよ。
 そんな水晶の中で何してるのよ?」
「え……っと?」
 彼女は口元に人指し指を当て考えているようだ。
 何で私はこんなのを相手にしてるんだろう?
「ただ……眠ってただけ」
 私の中で何かが切れた。
「んなこと見てれば分かるわよ!!
 ここにあるはずのお宝は何処にあるのよ?
 あんた何か知ってるんじゃないの??」
 勢いよく私はその水晶を覗き込む。
「ん……っと?……ああ。宝玉?これだよ」
 それにも動じず彼女はいたってマイペース。
「これって?」
「この水晶」
 思わず持っていた水晶を叩き割りたくなった。
「これのどこがよ!私は七色に輝く宝玉って聞いたのよ!!」
 暗い神殿に私の声が響き渡った。
「七色?そんなのないよ?」
「……。。。」
 私のここまでの道のりは一体?
 ガラガラと私の中で何かが崩れ去る。
 ペタンとその場に座り込んだ私を青い瞳が見上げる。
「どうかした?」
 冷たい風がひんやりと頬を撫でる。
「はあ、しょうがない帰るか」
 そそくさと立ち上がり戻ろうとする私に彼女は言う。
「だめですよ?あるじ様。私をおいてっちゃ」

「は?」

 何だか聞きなれない言葉が混じっていたような?
「ですから、宝玉を起こしてくれたあなたはあるじ様です。
 私を置いて言っちゃダメなのです」
 ニッコリとした顔が振り向いた先にある。
「は?」
宝玉が欲しかったのでしょう?どうぞ」
 ちょこんと座った姿で彼女は言う。
「えっと?いや、私が欲しかったのはお金になる宝玉」
「……私をここに置いていくのですか?……」
 途端に泣きそうな顔になる彼女。
 ため息がでると同時に頭が痛くなった。
「わかった。連れてけば良いんでしょ?」
「ありがとうございますぅ」
 さっきまでの泣き顔とは打って変わって満面の笑顔。
「私、きっとお役に立ちますよ♪」

 そういった彼女は確かに役に立った。
 神殿の魔物たちは彼女がほとんど一掃したようなものだった。

 遥かな昔― 精霊使いと精霊の出会いの物語。




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