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― 精霊使いと精霊2 ―

2023/09/03

4:精霊使いと精霊2

文字数:約1292文字
 歩き出す道の果て。
 忘れられない記憶の彼方― そこにあるのは?

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 森を抜けるとそこに広がるのは青い青い海だった。
「うわ~主様見て下さい。海です!!海ですよ~」
 水晶玉の中ではしゃぐ私。
「はい。はい。そんなの珍しくも何とも無い」
 主様が呆れた声で私に返した。
「え~そうですか?私には新鮮ですけど?」
 きょとんと主様を見上げる。
「そりゃーね。あんな真っ暗なところで寝ていたんだものね」
 真っ青な海を見下ろす主様の髪を風が優しく揺らした。
 それには構わず主様は歩を進める。
「何処に向かうのですか?海を見ていきましょうよ~」
「海なんて嫌って程見れるわよ。これから海を渡るんだから。
 あ、あんたは隠れててね。喋りかけるのもダメ」
 念を押すように主様は言い切る。
「なぜですか?」
「あんたの分の船賃がないのよ。あの神殿にろくなお宝が無かったから」
「ふなちん?」
 小首をかしげて私は聞き返す。
「船に乗るお金。まさか、船もお金も知らないわけじゃないでしょ?」
 不思議そうな顔の私に主様は怪訝な顔をする。
「う~んと?しらないですよぉ。神殿から出たの初めてですし」
 人差し指を口元に当てて私は答えた。
「そう言えば聞こうと思ってたけど、何で水晶の中にいるの?」
 主様が足をとめて水晶を覗き込む。
「う~?何ででしょう?気がついたら水晶の中だったのでわかんないですぅ」
「そう」
 何も覚えてない私に聞くのは無駄だと思ったのか主様はまた足を進める。
「ところで、船とかお金って何ですか?」
「海を渡るための乗り物が船。物々交換できるのがお金。こーいうの」
 主様が懐からごそごそと何かを取り出す。
 それはキラキラ光るまあるい小さなお皿みたいなものだった。
「わかった?」
 説明が終わり主様は確認するように言った。
「海を渡るのでしたら、私がお役に立ちますよ」
 私はあることを思いついた。
「は?」
「とりあえず、海に行きましょう~」
「いや、最初からそのつもりだけど……」

 そして、やって来た海――港という場所らしい。
「さてっと。主様、私を海に放り投げてください」
「そんなことしたら溺れない?」
 唖然と見返す主様にニッコリと微笑む。
「大丈夫ですよ~」
「そう???」
 釈然としない顔で主様は私を海に放り投げる。
 トプンと小さな水音が聞こえる。
 水晶が割れて水が私を包んだ。
 そして海が道を開くように割れた。
 魚達が私の周りでまるで見てというように優雅に泳ぐ。
 ふと気がつくと主様の姿が見えた。
「主様~。どうですか?これで海を渡れますよ♪」
「……あんた。あの水晶の??」
 驚いた顔で主様が私を見た。
「はい?どうかしました?」
「いや。大分変わったなあと……」
「そうですか?ちょっと鱗とかついただけですよ?」
 私は自分の姿を見つめる。
「それはそうと……さっさと行こう。あ、私が行った後は道、塞いでね」
 気まずそうな主様は後ろを振り返らずにすたすたと歩き出す。
「わかりましたですぅ」
 元気に返事をした私の後ろでは人々が口々に何かを言っていた。
 大騒ぎのもとが私だとも知らず、私は主様についていった。

 遥かな昔― 精霊使いと精霊の目覚めの物語。




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