13:少女の問い
文字数:約434文字
それは常に隣にある。生きるという事は― どういう事?
――――――――――――†――――――――――――
「生きているって何?」
不意にその子は聞いた。
ひざを抱えたままソファーに座って、言葉を続ける。
「死にたいって生きているから言える事よね」
テレビからはいじめの被害者のインタビューが聞こえる。
「おまえはまた、おかしなことを言う」
俺はコーヒーを入れながらそちらのほうをちらりと見る。
あいかわらず、テレビに見入ったままその子は言う。
「そう?だって、おかしいじゃない。
死にたいって言ってるのなら死ねばいいのよ。
それを戸惑うって事は生きたいって事じゃないの?」
「確かにね」
微かな苦笑いがもれる。
「私は死にたいと言う事も生きたいという事も分からない」
呟くように言って顔をひざにうずめた。
俺はそいつの頭をポンと撫でて言う。
「今、ここにいる事が生きているということだ。
死とは全てから消え去る事。
ま、人によって答えは違うがな」
「そう…」
熱いコーヒーを一口飲み、彼女は黙った。
<<前へ 時 次へ>>