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― 天使の空間 ―

2023/09/03

17:天使の空間

文字数:約634文字
 刹那の空間。
 また― 会えますか?

――――――――――――†――――――――――――

 ここ……どこ?
 気がつくとそこは白い空間だった。
 光が降り注ぎ、風が通り過ぎる。
 足元には延々と続く綿の絨毯。

「何しにきたの?」

 何処からか声が聞こえる。
 きょろきょろと辺りを見回しても、誰もいない。
「ココよ。上にいるのよ」
 その声にしたがって視線を上に上げると、天使がいた。
 大きな六枚羽の天使が私を見下ろしている。
「どうかした?」
 きょとんとした私に天使が言う。
 私はぷるぷると首を横に振った。
「そう?」
 ユメかな。夢ってことにしておこう。
「で、何しにきたの?」
 何をしに……と言われても気がついたらココにいた。
 どうしてなんて分からない。
「忘れたの?」
 考え込んだ私に天使はゆっくり降りてきて視線を合わせる。
 私はこっくりと頷いた。
「ふふっ。変な子。喋れないの?喋らないの?どっち?」

 どっち―――――――?
 喋れない……わけじゃない。
 言葉は知ってる。
 会話もできる。
 ただ、伝える事が――――

 怖かった。

 右手がぎゅっと天使の腕を掴んでいた。
 天使はそれを振りほどかない。
 少し驚いた顔をしただけで、そのまま傍にいた。
 頬を雫が濡らす。

「泣かないで、ほら、お菓子でも食べよう」
 しばらくして天使が困ったように笑っていた。
 それから天使とお菓子を一緒に食べた気がする。

「もう、戻らなきゃ。ココはあなたの居ていい場所じゃない」
 不意に天使が言った。
「……また、会える?」
 不安気に聞いた私に天使は微笑み返す。

「きっと、ね」




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