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― 迷い森の天使達 ―

2023/09/03

19:迷い森の天使達

文字数:約860文字
 サラサラざわめく木々の間。
 何処からとも無く― 声が聞こえませんか?

――――――――――――†――――――――――――

 ……。
 迷った。
 地図を片手にうっそうとした森を見上げる。
 そこには、天使達がヒラヒラと涼しげに舞っていた。
『だーかーら。あっちって言ったのに』
『違うって、こっち』
 口々に勝手な事を言ってはあちこちを指で指す。
「……」
 俺はと言うと天使なんぞ当てにせず、
 地図と格闘しながら自力で何とかしようとした。
『あ、ねえってば、どこいくの?』
 さっさと進もうとする俺に天使の一人が問う。
「てめーらなんか当てにできるか!
 大体さっきから言う事を信じて歩いてきたのに
 一向に森から出られねーじゃねぇか」
『だって、それはこの子が』
『えー、僕のせい?』
『そーいう、あんただって』
 また、ざわざわとけんかが始まった。

 最初に出てきたのは一匹の天使だった。
 地図を片手に立ち止まった時に
『こっちだよ』とだけ言って消えてしまったのだ。
 そして、立ち止まるたびに
『こっちだよ』というので信じてついてきた。

 それがいつのまにか天使が増え、
 ざわめきが増え、不安が増えた……。
「いい加減にしろ!!」
 たまらず叫んだ声に天使たちが一斉にぴたりと止まった。
「森の入り口の村で聞いたけど、お前らか?
 森に入ってくる旅人を迷わせてる魔物ってのは」
『えー。なんのこと?』
『私たちはただ、出口を探してるだけよ』
「……。今なんと?」
 額から汗がつっと落ちてくる。
『だーかーら。出口を探してるの』
「出口を知らずに俺に指図してたってわけか」
 頭がガンガンと鳴った。
『僕たちだって、生きてた頃に見つけたかったよ。
 だけど、気がついたら死んでたんだもん』
『だから、あなたは生きてるうちに見つけてね。
 死んじゃったら生きてる人間に連れてって貰わなきゃ
        ―動けないもの―』

 ニッコリと一人の天使が微笑んだ。

 そこは迷い森。
 魔物たちが旅人を誘い迷わせると伝えられる場所。
 時折、天使が見られる事から『天使の森』とも言われる。

「お前らの仲間になってたまるかー」

 今日も哀れな旅人の声が森に木霊する。




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