20:泡色教室
文字数:約583文字
学び舎での最後の日。小さな恋色― 探しませんか?
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だーい好きだよ。
そう伝えられたらいいのに―
それはちょうど帰ろうと教室を出た時。
「うわっ」
「え?」
人が目の前にいた。
「わりい。ちょっとかくまってくれ」
「え?」
何がなんだか解らないうちに
ガラリッ
と教室の戸が開く。
「ねえ、あいつ何処行ったか知らない?」
あいつとは卓の事だろう。
「さ、さぁ?」
「あー」
私の声を聞く間もなく、計は卓を見つけてしまったらしい。
「やべっ」
「
手渡されたカメラ。
「あ、うん」
鞄を手近な場所に置きカメラを構える。
「あ、待ってって」
直前までニッコリ引きつって笑ってた卓が逃げ出し、
計が捕まえる―そんな写真になってしまった。
「はずいって、こんなの」
卓は真っ赤な顔でしかめていた。
「いーじゃない。記念よ。あ、文も入る?」
「私は……」
「とるよー」
私の返事も聞かず計が私を押しやりシャッターを切る。
「記念ね」
一枚の写真と手紙を手に湖にたたずむ。
額の汗を拭い、辺りを見回す。
色あせる事の無い記憶の桜。
差すような日の光に輝く水面。
その中に揺らぐ建物達。
聞こえるのは蝉の声。
「記念か……」
伝えられなかった想い。
今なら伝わるだろうか?
「だーい好きだよ」
今、届くのは木々のざわめき―
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