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― 泡色教室 ―

2023/09/03

20:泡色教室

文字数:約583文字
 学び舎での最後の日。
 小さな恋色― 探しませんか?

――――――――――――†――――――――――――

 だーい好きだよ。
 そう伝えられたらいいのに―

 それはちょうど帰ろうと教室を出た時。
「うわっ」
「え?」
 人が目の前にいた。
「わりい。ちょっとかくまってくれ」
「え?」
 何がなんだか解らないうちにたくは行ってしまった。
 ガラリッ
 と教室の戸が開く。
「ねえ、あいつ何処行ったか知らない?」
 計けいが顔を突き出して聞く。
 あいつとは卓の事だろう。
「さ、さぁ?」
「あー」
 私の声を聞く間もなく、計は卓を見つけてしまったらしい。
「やべっ」
ふみ、これで二人を撮ってくれる?卒業記念に」
 手渡されたカメラ。
「あ、うん」
 鞄を手近な場所に置きカメラを構える。
「あ、待ってって」
 直前までニッコリ引きつって笑ってた卓が逃げ出し、
 計が捕まえる―そんな写真になってしまった。
「はずいって、こんなの」
 卓は真っ赤な顔でしかめていた。
「いーじゃない。記念よ。あ、文も入る?」
「私は……」
「とるよー」
 私の返事も聞かず計が私を押しやりシャッターを切る。

「記念ね」



 一枚の写真と手紙を手に湖にたたずむ。
 額の汗を拭い、辺りを見回す。
 色あせる事の無い記憶の桜。
 差すような日の光に輝く水面。
 その中に揺らぐ建物達。
 聞こえるのは蝉の声。

「記念か……」

 伝えられなかった想い。
 今なら伝わるだろうか?

「だーい好きだよ」

 今、届くのは木々のざわめき―




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