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― 花舞う地にて ―

2023/09/03

36:花舞う地にて

文字数:約389文字
 一人消え行き、花が咲く。
 誰にも知られぬように― なぜ咲くの?

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 その手紙が届いたのは偶然。
 波間に漂うビンの中に一通の手紙が入っていた。

 中には
『いつか出会う。誰かへ―
 一緒に行きましょう』
 と書かれた紙……

 ヒンヤリと手から雫が滴った。
 それを見つけたのは、日課にしていた朝の散歩の途中。
 誰にあてられたでもない手紙を、
 私は家に帰って引き出しにしまった。

 次の日にも手紙は来た。
『いつか逢う。貴方へ―
 一緒に来て
 ~~~へ』
 ビンの中に水が入った所為か、最後の文字がぼやけていた。
 それを小箱にしまった。

 次の日も私は手紙を拾う。
『逝ってしまった。住人へ―
 一緒に傍にいて』
 手紙は読み終わると空へと帰っていった。

 あたり一面の花畑の中で一人それを見送った。
 手紙は死した者へ届けられる。
 死せば花が増えゆき、想いが届く。

 誰も知らない花舞う地へと――




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