37:空果てぬ地にて
文字数:約637文字
一人消え行き、想いが残る。誰にも知られぬように― 何処へ行くの?
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夢見人は夢を見ない。
永遠の時を、先の見えぬ時間を―
見つめ続けるだけ。
人の思いは消えることなく果てしなく。
憎悪・恋愛・苦痛・快楽。
残される思いの行く果て。
憎い。愛しい。殺したい。抱きしめたい。
ユラユラと闇が踊る。
正反対の想いに揺られて
矛盾する感情に惑わされ
触れられれば、砕け散ってしまいそうなのに
話し掛ければ、壊れきってしまいそうなのに
気がつけば一人きり。
「大丈夫?」
心配そうな目で見下ろすのは女の子。
綺麗なレースのドレスを着て、
クルクル巻き毛が肩にかかっている。
「何に、苦しんでるの?」
あの子に似ていた。
私を苦しめたあの子に―
「ねぇ、見て。あの方、素敵だわ」
「この服似合う?あの方、気に入ってくださるかしら?」
「聞いてちょうだい。結婚が決まったの」
「素敵でしょ?ねぇ、喜んでよ」
無邪気な笑顔で、私の思いに気がつかないまま、
あの子は行ってしまった。
どんなに私が傷ついたかも知らないまま。
私の手が女の子の首を絞めていた。
「それで、救われるの?」
涙目で呟いた言葉が、私の心に突き刺さった。
違う―
手からゆくりと女の子の体が滑り落ちた。
愛したかっただけ。抱きしめたかっただけ。
気がついて欲しかっただけ――
空の上だと、思った―
気がつくと、あたりは真っ青で何処までも果てしない。
天上をよく見るとユラユラと光が踊っている。
水……?
行ってみようか?
空の果てへ―
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