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2【性別文化逆転】
「……かわいい?」引きつった顔で少年が振り向いた。
「ぶっ……か、かわいい」
恐ろしいくらい似合ってるフリルのスカートから思わず目を背ける。
「…これ、着る必要あるの?」
「あるある……」
笑わないように気を付けて、少年を宥める。
少年の顔は明らかにブスッとしている。
それはそうだろう。フリルのスカートなんて少年の好みではない。
ならばなぜ?と言えば、バレたからだ。
「ホント、嫌な時代だな。長く生きるんじゃなかった」
「……老人か」
少年のボヤキに思わず突っ込んだが即座に。
「老人だよ」と返ってきた。
比喩でも何でもなく、実際そうなのだ。
たまたま、長く若く生きてる化け物なだけで私たちが育った時代には男女の性文化はほぼ逆転していた。
フリルのスカートと言えば女の子のもので、男が着るなんて…と言われいた。
気が付けば、多様性なんてものが叫ばれ、「男もスカートはいて何が悪い」と言われる様になり……
時代はぐるりと一周して、多様性は消え去り「男らしさ」「女らしさ」も一転した。
三つ子の魂なんとやら……で、この時代に育ってない私たちには男がスカートなんて……という価値観が刷り込まれてる。
普段は性別逆転で生活していたが、うっかりとバレたのだ。
そして早速、スカートを勧めらた。
真っ赤になってる少年の気持ちを欠片も知らず、店員は「可愛らしいですね。素敵ですよ」と褒めまくる。
「これ、買います!!」
自棄になって少年はスカートもブラウスもひったくってレジへと持って行った。
……。それを見ながら、明日は我が身とぞっとする。
……とはいえ、元々女だった私は、着るものに抵抗はない。
問題は……「女なら男の目の前で着替えても大丈夫」という価値観の方だ。
フリルスカートより恐ろしい。
レジから袋をひったくって、店を出ようとする少年を追う。
「なぁ。楽しんでない?」
「もちろん」
シレッと答えた私の頭に紙袋が降ってくる。
「さっさと引っ越そうぜ!!」
「稼ぐのが先!!」
しばらくは少年のフリル姿を楽しめそうだ。
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