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8【隔離の箱】
チクッと何かがさす痛みが指先に走った。指を見ても何もないように見えた。
じーーーと見つめる。
細く赤い線がひかれるのが見えた。
「かまいたちだ」
次は頭がジンジン痛む。
「何バカな事言ってるの? 単に紙で切っただけ」
声だけが部屋に響く。
「妖怪……頭を叩く妖怪って何?」
「知らない」
僕は彼女を知らない。いや、女だろうというのも僕の勝手な判断だ。
バンエイドを指に巻く。
「家?」
声が僕に問う。
「そうだよ」
紙で作った家に屋根を乗せる。
閉じてしまおうかとも思ったが、閉じたら中が見えない。だから、ただかぶせるだけにした。
「よく出来てる」
「うん。暇だから」
ここには時間がない。あるのは家と音声ガイド。
そして、空間転移で運ばれて来るモノたち。
僕はここがどこなのかも知らない。
「ねぇ。僕はいつ出られるの?」
「病気が治ったらね」
どちらの?と聞きたくなる。
病気なのは本当に向こう側なのか。僕が病気だから隔離されているのではないか。
「夜更かしもほどほどにね」
「ここには夜はないんだ」
眠そうなあくびが聞こえた。
窓には一応、昼と夜の時間の映像が流れている。
けれど、その先は闇だ。真っすぐ歩いて、この家に戻ってくる。
闇の中で方向感覚が狂うせいなのか、何かからくりがあるのか判らない。
「そうね。でも、私は寝るわ」
通信が切られる音がする。
闇に向かって歩き出す。
ぐるりと回って家に戻る。
何も変わらない日々がまた続く。
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