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― かくれんぼの館 ―

2022/05/12
文字数:565文字

11【かくれんぼの館】

夢を見た。

長い通路が目の前に続いていた。
壁の両方に部屋が沢山ある。
どの部屋も扉が開いて、中が見えていた。

「次はあなたの番よ」

唐突に声がした。
振り返ると知らない子が、私に笑いかけていた。
きょとんと私はその場に立ち尽くす。

「あなたの番よ」

声が繰り返す。
「何が?」と聞こうとして、かくれんぼをしていた事を思い出した。
私は頷く。

「いーち、にー、さーん」
壁の方を向いて数を数える。
パタパタと足音が遠ざかっていった。

「……じゅーう、もーいーかい」
「「もーいいよ」」

沢山の声が響いた。
私は駆けだす。あの子だけではない。たくさんの子がここに隠れているんだと知っていた。

一人見つける度に「みつかったぁ」と楽しそうな声が響き渡る。
一つ一つの部屋は広くて、たいして物が置いてない。
窓は大きくて、光が溢れんばかりに部屋に注ぎ込まれている。

机の下。
暖炉の中。
カーテンの裏。
戸棚の横。
扉の裏。

時には私の死角を狙って隠れている子もいた。

どこまで探しても部屋は尽きない。
どれだけさがしても、隠れてる子は居なくなら無い。

段々、楽しくなってきた。
この状況が何なのか分からない。
見つけた子供たちと、何かを探してることが楽しくなってきた。

「遅れるよ!」

唐突に現実の声が響いて、夢が消え去った。
笑い声も部屋の光も暖炉も消えて、天井が目の前にある。

変わった夢を見たと思った。




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