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― 二人なら大丈夫 ―

2022/05/12
文字数:約791文字

9【二人なら大丈夫】

夢を見た。
そこは学校のようだった。
学校に似ていたけれど、机や椅子などはない。
空っぽの教室が延々と並んでいる。
そこに私を含めて数人がいた。

スピーカーから声が流れた。
『ゲーム開始』
ゲームの説明は一切ない。
お互いに顔を見合わせていると、遠くから悲鳴が聞こえた。
反射的に身構えるもの。逃げ出すもの。様子を見に行こうとするもの。
それぞれが思い思いの行動を取った。
私は一瞬迷った後、逃げた。
階段はどこまで行っても果てがない。廊下もずっと先が見えないまま。
一階と屋上は存在しない。
建物の端も存在しない。
変わる景色と言えば、廊下か階段か教室の中かの違い。
窓は全てすりガラスのように曇っていてビクともしない。

時々起こる悲鳴に、何かが起こってる事を感じはするが確認する勇気はない。

悲鳴から遠ざかる事を目的としてたはずなのに、それは唐突に目の前に現れた。
階段の上、ずっしりとした体とギラギラ光る眼。毛に覆われてるそれは人間ではなかった。
目の端で爪先をとらえるのが精いっぱいで、動く事なんて出来なかった。
死ぬんだ。
と思った時、「飛べ」と声が聞こえた。
考える間もなく、私は足元を蹴っていた。
自分が考えていたよりも高く体が浮く。

化け物の爪は声の主が棒のようなもので払いのけていた。
私の身体は元いた場所よりも後ろへ着地した。
「逃げるよ」
声の主が私の手を引く。
化け物は後ろで動いていたけれど、素早くはない。
私たちはその場から、逃げることが出来た。

その後も二人で窮地を脱した。
なぜか私の身体は思ったよりも軽く動く。
化け物の動きはそれほど早くはない。
出口は依然見つからなかったけれど、脅威は脅威ではなくなっていた。

何度目かの化け物との遭遇の後
「ね。二人なら大丈夫でしょ」
と声の主が言う。
「そうだね」と私が返す。
そして、叫び声が響いて、生きてる誰かを助けに声の主が走り出す。
私は後に続こうとして……


その辺りで目が覚めた。




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