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― 旅行と朱色の鳥居 ―

2022/05/12
文字数:約946文字

17【旅行と朱色の鳥居】

夢を見た。

どこかに旅行に来ていた。
建物の中にテーマパークのようなものがあった。
一通り見終わって出入り口に行くと、
「集まって、次の場所に行くよ」
という集合の声が聞こえた。
建物の中では一人で行動していた。
けれども、そう言えば団体で来たのだと思いだした。

「行こう」
と誰かが私を先へと押し出す。
「用事があるから、そこに寄る。後から追いつくから」
と返していた。

私は唐突に用事を思い出していた。
それは、「火葬しなければいけない」という用事だった。
大切な人に頼まれていたのだ。
「私が死んだら、あなたが燃やして」と。
私は大切な人が入った箱を手にしていた。
みかんの段ボールくらいの大きさだった。
素材は黒い石だった。まるで墓石のようにつやもある。
けれども、重さはあまり感じない。
黒い石の箱を持って、人混みの中を進む。


目の前に鳥居が現れて、私はそれを潜った。
その先に寺のようなものが見えた。
入ってみると、お堂が広がっていた。
中にも沢山の人がいた。
色んな箱を持っている。
奥の方にロッカーのようなものがあるのが見えた。
その前で職員らしき人が、箱を受け取ってロッカーに入れて扉を閉めている。

私はそこで、火葬が行われていると思った。
なので、私も箱を職員に渡した。

箱には一枚の紙が張り付いていた。
それを確認した職員は一瞬、迷った顔をした後に箱を受け取った。
隣の職員が「いいのか?」と聞いているのが聞こえた。
箱を受け取った職員は、「いいんだ」と言った。

私も一瞬箱を渡していいのか迷った。
何故なら紙には日付が書かれていて、それはもう少し先だったからだ。
ここに来ている人達は、今日の日付が書かれた箱を持っている。
今日が予約日だからここにいる。
なのに、私の箱の日付は今日ではない。
それに気がついた他の数人が、こちらをにらむように見ている事にも気がついた。
今日がこんなに混んでいなければ、そんな風にいわれる事もない。
けれども、今日、ここはなぜかこんなにも混んでいる。

居心地の悪さを感じつつも私は、『でも、私も以前から予約してるんだし』と思う事にした。
そして、大切な人が白い骨になる事を想像した。
その骨を黒い石の箱に収める事を想像した。

想像しながら、なぜあの人は私にそんな事を頼んだのだろう?と思った。


そんな事を考えていると目が覚めた。




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