編集

― 障子戸と鼻くそ※ ―

2022/05/12
微エロ注意
文字数:約1424文字

22【障子戸と鼻くそ】

夢を見た。

何かの講座に参加して、ある女性と意気投合した。
「家を出たいと思っている」
と私が話すと、女性は「私の家に来たらいい」と誘ってくれた。
深くは考えずに、女性の家へと行った。

そこは一軒家だった。
廊下を通って、とある一室へと入る。
ドアを開けると、部屋の向こう側は障子戸になっている。
下半分はガラスになっていて、障子戸の向こうは廊下になっている事が判った。

二人で話していると、髭が伸び放題で赤ら顔の男性がやってきた。
ふすまを開けて入ってくると、私に向かってこう言った。
「お前もここに居たいなら、居たらいい。俺の相手をしてくれたらそれでいい」
一瞬、相手の言っている意味が分からなかった。
前半は私をここに置いてもいいという事。後半は……。
私が何かを答える前に、男性は女性の腕を引っ張り上げた。
「お前は、俺の相手をしろよ」
彼女は私に小さく手を振った。
「ちょっと、行ってくるね」
ああ。そーいうことかと納得した。
それもいいかもしれないと思いながら、二人の営みが終わるのを待つ。

再び誰かがやってきた。
中年の女性で、派手な化粧をしている。彼女の母親のようだと思った。
「またやってるの?」
二人が入って行った部屋を見ながら、その女性がため息とも嫌悪とも取れる様な息を吐き出した。
「あんたも同じなんでしょ」
吐き出すように言って、ふすまを閉める。
あの人は、娘と父親のやっている事を嫌悪しながら、止めないんだと思った。

しばらくして、彼女が戻ってきた。
「ちょっとめんどくさいけど、本当にここに居たかったら、そうしていいから」
彼女はそう言って笑った。
「妹には会った?もう、帰ってきてると思うんだけど」
そう言いながら、再び部屋から出て行く。
私は彼女の後に付いて、部屋から出た。
妹の名前を呼びながら、彼女は廊下を進む。
ある部屋の前で、彼女の声と足が止まった。

「いた。いた。ここ……見える?」
障子のはめ込まれた戸は一部がガラスになっていて、中が見える。
そこから、部屋の中をのぞき込む。
けれど、中は真っ暗で人らしいものは見えなかった。
「ねー。可愛いでしょ。私の自慢の妹なの」
彼女はにこにこしながらそう言うが、私には妹の姿が確認できない。
「ちょっと待っててね」
と言って、彼女は再び元の部屋へと戻る。
私はどうしたものかと思ったけれども、待っていてというのだからと待った。
と、部屋の中で音がして、人がいる気配がした。
「また、おねぇちゃんでしょ。近寄らないでって言ってるのに」
戸が開かれ、腕が伸びる。
その腕が私の腕を引っ張って、部屋の中へと引きずり込む。
部屋の中は、やはり暗かった。
けれど、先ほどは見えなかった妹の姿が目の前にあった。
190センチはありそうなくらい、大きな背丈。
身体もがっしりとしていて、彼女の妹には見えない。
「……だれ?」
ぽつりとつぶやく声に、何と答えればいいのか判らない。

「あー。おっはよー。起きたの?」
彼女が戻ってきて、妹にじゃれつく。
「邪魔!!消えて」
妹は即座に、姉である彼女と、私を部屋から追い出した。
「もー、恥ずかしがり屋なんだから」
彼女は天然なのか、シスコンなのか、妹が好きという感情しか持ってないようだ。

再び、元の部屋に戻った。
「いい子なんだよー」
彼女は妹自慢をしながら私の足に鼻くそを付けた。
それを見ながら、『気持ち悪いな』と『別にいいか』という二つの感情が混ざった。
「でね……すぐなれるから」
彼女がそう言って、私の方を見た。

目が覚めた。
足に鼻くそは無かった。




<<前へ    次へ>>