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23【地下にあるもの】
夢を見た。そこは広い地下だった。
天井は高く、細い水路が幾筋も通っている。
そして、20人ほどの仲間がそこにいた。
私たちは何かを探して駆除していた。
マントに手袋。これでとんがり帽があれば魔法使いスタイルと言えそうだが、帽子は無かった。
「もうここはいいぞ。上がれ」
教師らしき人がそう声をかけて、皆が手近な梯子へと手を伸ばす。
私はもう少し、地下を見て回りたかった。
「何か気になるの?」
仲間の一人が声をかけてくる。
「うん。ちょっと……」
自分でも何が気になるのか分からない。
「でも、もう、皆行ってしまうよ。ここに用事はないんだし、行こう」
そう言われて、私は梯子を上がる事にした。
地上には芝生が広がっていた。
洋館のような建物が傍にあって、ここが裏庭らしきものと言う事が判った。
「次は向こうだ」
先ほどの教師がみんなを先導していく。
教師の後についていくと、庭園のような場所に出た。
そこではパーティーが開かれているらしく、ちょっとした飲み物や食べ物が用意されていた。
そこにいる人達もドレスやタキシードを着て正装している。
教師は受付で止められた。
「あなたたちのような人が、来る場所ではないんです」
受付の人がそう言って、断っている。
教師は「でも、招待されたんだ」と押し通ろうとする。
そうこうするうちに、受付の人が別の場所に呼ばれて行ってしまった。
幸いとばかりに、教師は私たちをパーティー会場へと案内する。
けれど、パーティー会場に用があるわけではなかった。
パーティーをしている人達を横目に素通りして、庭の端まで来る。
そこに再び、地下への鉄格子と梯子があった。
再び、何かを駆除するために地下へと降りる。
この地下は先ほどのような広い場所ではなかった。
水路の横に細い通路があって、それが長々と続いている。
数人ずつが固まって歩くのがやっとで、先ほどのように20人すべての行動が見渡せるわけではない。
ここでは数人ずつに分かれて、それぞれが担当の場所をやることになった。
私も数人で水路を進む。
と、不思議な場所に出た。
水路は唐突に消えて、通路は倉庫のような場所に繋がった。
家具が沢山置いてある。家具の間は狭く、人が一人通るのがやっとだった。
「いらっしゃいませ。何かご入用ですか?」
家具の間から、唐突に声が聞こえた。
声の方を見ると、店員らしき人が声をかけてきたことが判った。
その先には光が見える。ということは、ここは地上なのだと思った。
気が付くと、仲間もいなくなっている。慌てて、来た道を戻る。
家具の間を通り抜けると水路には戻らなかった。
そこは、ただの地下道だった。
駅や交差点などにあるような、ただの地下道。
広い通路には誰もいない。
よく見ると、脇にトイレがある。
用事もないけれども、トイレに入ってみた。
トイレに入ったつもりだったけれども、そこはトイレっぽい空間なだけでトイレではなかった。
用を足す場所が無い。向こう側には、地下道の通路が広がっている。
地下道の中央にトイレのような空間が広がっているだけだった。
自分がどこにいるのか分からなくなる。
どちらに進めば、地上に出るのかもわからない。
「何してるの?」
ふいに声をかけられて、そちらを見る。
先ほどまで一緒にいた仲間が「こっちだよ」と手招きをする。
私はホッとして立ち尽くしてしまった。
動かない私の手を取って、仲間が行き先を教えてくれた。
地上では先ほどと変わらず、パーティーが行われていた。
と言うようなところで、目が覚めた。
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