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― 地下にあるもの ―

2022/05/12
文字数:416文字

23【地下にあるもの】

夢を見た。
そこは広い地下だった。
天井は高く、細い水路が幾筋も通っている。
そして、20人ほどの仲間がそこにいた。

私たちは何かを探して駆除していた。
マントに手袋。これでとんがり帽があれば魔法使いスタイルと言えそうだが、帽子は無かった。

「もうここはいいぞ。上がれ」
教師らしき人がそう声をかけて、皆が手近な梯子へと手を伸ばす。
私はもう少し、地下を見て回りたかった。

「何か気になるの?」
仲間の一人が声をかけてくる。
「うん。ちょっと……」
自分でも何が気になるのか分からない。
「でも、もう、皆行ってしまうよ。ここに用事はないんだし、行こう」
そう言われて、私は梯子を上がる事にした。

地上には芝生が広がっていた。
洋館のような建物が傍にあって、ここが裏庭らしきものと言う事が判った。

「次は向こうだ」
先ほどの教師がみんなを先導していく。
教師の後についていくと、庭園のような場所に出た。
そこではパーティーが開かれているらしく、ちょっとした飲み物や食べ物が用意されていた。
そこにいる人達もドレスやタキシードを着て正装している。
教師は受付で止められた。

「あなたたちのような人が、来る場所ではないんです」
受付の人がそう言って、断っている。
教師は「でも、招待されたんだ」と押し通ろうとする。
そうこうするうちに、受付の人が別の場所に呼ばれて行ってしまった。
幸いとばかりに、教師は私たちをパーティー会場へと案内する。

けれど、パーティー会場に用があるわけではなかった。
パーティーをしている人達を横目に素通りして、庭の端まで来る。
そこに再び、地下への鉄格子と梯子があった。

再び、何かを駆除するために地下へと降りる。
この地下は先ほどのような広い場所ではなかった。
水路の横に細い通路があって、それが長々と続いている。
数人ずつが固まって歩くのがやっとで、先ほどのように20人すべての行動が見渡せるわけではない。

ここでは数人ずつに分かれて、それぞれが担当の場所をやることになった。
私も数人で水路を進む。
と、不思議な場所に出た。
水路は唐突に消えて、通路は倉庫のような場所に繋がった。
家具が沢山置いてある。家具の間は狭く、人が一人通るのがやっとだった。

「いらっしゃいませ。何かご入用ですか?」

家具の間から、唐突に声が聞こえた。
声の方を見ると、店員らしき人が声をかけてきたことが判った。
その先には光が見える。ということは、ここは地上なのだと思った。

気が付くと、仲間もいなくなっている。慌てて、来た道を戻る。
家具の間を通り抜けると水路には戻らなかった。
そこは、ただの地下道だった。
駅や交差点などにあるような、ただの地下道。
広い通路には誰もいない。
よく見ると、脇にトイレがある。
用事もないけれども、トイレに入ってみた。
トイレに入ったつもりだったけれども、そこはトイレっぽい空間なだけでトイレではなかった。
用を足す場所が無い。向こう側には、地下道の通路が広がっている。

地下道の中央にトイレのような空間が広がっているだけだった。

自分がどこにいるのか分からなくなる。
どちらに進めば、地上に出るのかもわからない。

「何してるの?」

ふいに声をかけられて、そちらを見る。
先ほどまで一緒にいた仲間が「こっちだよ」と手招きをする。
私はホッとして立ち尽くしてしまった。
動かない私の手を取って、仲間が行き先を教えてくれた。

地上では先ほどと変わらず、パーティーが行われていた。

と言うようなところで、目が覚めた。




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