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― おかみと絶望 ―

2022/05/12
文字数:861文字

28【おかみと絶望】

夢を見た。

古い街並みの中を歩いていた。
時代劇に出る様な……という感じではなく、観光地のような場所だった。

一つの建物が気になって、入ってみた。
中は広い畳の部屋がいくつも連なっていた。
家族連れや友人同士など少人数のグループがポツポツといる。
長机が置かれていて、そこで飲食を楽しんでいる。

私はその建物の中をフラフラと歩いていた。
広い畳の部屋は襖で仕切ってあるけれども、大半の襖が開いたままになっている。
細長い廊下、畳の部屋、細長い廊下、畳の部屋が繰り返し目の前に現れる。
やがて、その建物のおかみらしき人が、私に声をかけた。
「何を注文なさいますか?」
私は何かを注文して、それを食べてから、外に出た。

外に出ると、何かの集団でここにやってきたのだと思いだす。
私は集合場所へと急ぐ。
置いて行かれずに帰る事が出来た。

何度かその場所へと旅行すると、「もう、ここに来てはいけない」という想いが沸き上がった。
私はモヤモヤした気持ちのまま、その建物に入って、いつものように畳の部屋と廊下とを繰り返した。
やがて、いつものようにおかみがやってきて、注文を聞く。
私は「チャーハン」を頼んだ。

頼んだ後もフラフラと建物内を歩いて、『靴』を探した。
もう、今すぐにでもこの建物から立ち去りたかったが、靴がなくて外に出る事が出来ない。
靴が見つからないまま、おかみがチャーハンを持って来た。
私はそれを食べる気がないと伝えると、
おかみは
「若いのに、そんな絶望的な目をして」
と説教を始める。
私は
「すでに若いと言われる年は過ぎてる。私は32だ」
と伝えて、その場を立ち去った。

その後、おかみは他の人の困りごとを解決して、再び、私の方へとやってきた。
「いくつになっても、絶望なんかしない方がいいに決まってる」
と言ってきた。
私は、未だに靴を探して、建物から出られなかった。

けれど、おかみの言葉で年齢が関係ないと言う事に気がついて、ほっとした気分になった。
と同時に、おかみの後ろに靴箱がある事に気がついて、そこに『靴』があった。

私は靴を履いて、その建物を出た。

というあたりで、目が覚めた。




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