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― 白骨が見たい ―

2022/05/12
文字数:723文字

1【白骨が見たい】

黙々と新聞を読む同居人の隣で本を読んでいる。
いつもの風景、いつもの事。

「ねーねー」
来たと思った。

「死体ってよくあるものかな。探したら見つかるかな」

うわぁぁぁ。今日はまたとんでもない話題が飛んできた。
「何でそう思うの?」
何でもない風を装って、聞き返す。
「だって、ここ数日、死体のニュース満載なんだよ」
と言ってくる同居人の顔は笑顔いっぱいだった。
同居人が頭蓋骨の模型を持ってるのは知ってる。
知ってるが……私はその話には乗りたくない。

「そっか」

「ねーねー。聞いてよ――」
無視を決め込む前に、こちらの様子に気がついてか気が付かずにか同居人の方から畳みかけてくる。

「あのね。月曜は川で白骨死体の発見で、火曜が川で遺体発見で、水曜は海で死体発見で、木曜はおさかなさんを捕る網に死体が引っかかってたんだって。
でね。金曜は高校で模型だと思われてた頭蓋骨が本物だったんだって、土曜は山でバラバラ死体が見つかって、日曜はすぐそこの車の中で自殺死体が見つかったって」


うわわわわわわ。
死体ニュースのオンパレードを聞かされるなんて堪ったもんじゃない。
「……す、すごいね」
キラキラの目が何かを訴えてくる。
「山や海だけじゃなくて、学校や道端にも死体はあるんだよ」

「……うん」
もはや、なんと言えばいいのか分からない。

「だから、探せばあるかなって思うんだ。
あ。でも、白骨死体は見つけたいけど、腐乱死体はヤダなぁ」

問題はそこなのか??
もはや、本の内容はぶっ飛んでいる。
コーヒーでも飲んで落ち着こうと思い、立ち上がる。


「あ。ねぇ。だからぁ」

同居人が立ち上がる私の裾を引っ張る。


「一緒に探そう。白骨死体……」


にっこりと同居人は私を誘う。

「……無理」


それだけ言うと、私はその場から離れた。




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