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14【勇者と王様と魔王】
夢を見た。まるでロールプレイングゲームの中のようだった。
竜のような動物。3・4人の仲間。
そして、眼下に広がる大陸と海。
竜の上で私は仲間と共に大陸を眺めていた。
お城のようなものが見えた。
「あそこで王様に会うのよ」
仲間の一人が言う。
竜が急降下して、お城らしきものの前へと舞い降りる。
足が地面につく安定感にホッとする。
扉を開けて中へと進む。
「おーい……」
呼びかけても誰もいない。
ただただ、灰色の石の廊下が続いている。
足元には深紅の絨毯。
ぴょんと突然飛び出てきたのは、人。
……たぶん人のようなもの。
小さなというか、上からギュッと押されたような人が出てきた。
そこで、説明が始まる。
要約すると、「魔王が暴れて困っている。倒して、報告してほしい」と言うような事だった。
外へ出て、再び竜に乗り魔王が暴れている……と言っていた地点を目指した。
空から陸地を見ると、あちこちに関所らしきものが見える。
「魔物の侵入を防ぐためだろう」
と、仲間の一人が言った。
目的の場所は酷く汚れた塔だった。
一歩踏み入れただけで、そこがガランドウな事が分かった。
あるのは外側の壁だけで、中は広い空間が広がっている。
その中心に、少女がいた。
「王様が魔王なのよ」
と少女が言う。
意味が分からなかった。
少女が塔の出入り口を指さした。
そこには、あの潰れた人らしきものが数体ぴょんぴょんと跳ねながら、こちらを見ている。
「彼らが見てる。この世界に逆らう人間を」
関所も魔物の侵入を防ぐためではなくて、民の移動を防ぐため。
この世界のどこにも倒すべき敵はいない。
それでも、何かを倒さなければいけない。
魔王ではない何かを魔王に仕立てて倒さなければ。
そして、王様に報告しなければ。
私たちが殺される。
そう、気が付いたときに目が覚めた。
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