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― 勇者と王様と魔王 ―

2022/05/12
文字数:732文字

14【勇者と王様と魔王】

夢を見た。
まるでロールプレイングゲームの中のようだった。
竜のような動物。3・4人の仲間。
そして、眼下に広がる大陸と海。
竜の上で私は仲間と共に大陸を眺めていた。

お城のようなものが見えた。
「あそこで王様に会うのよ」
仲間の一人が言う。
竜が急降下して、お城らしきものの前へと舞い降りる。
足が地面につく安定感にホッとする。
扉を開けて中へと進む。
「おーい……」
呼びかけても誰もいない。
ただただ、灰色の石の廊下が続いている。
足元には深紅の絨毯。
ぴょんと突然飛び出てきたのは、人。
……たぶん人のようなもの。
小さなというか、上からギュッと押されたような人が出てきた。
そこで、説明が始まる。
要約すると、「魔王が暴れて困っている。倒して、報告してほしい」と言うような事だった。

外へ出て、再び竜に乗り魔王が暴れている……と言っていた地点を目指した。

空から陸地を見ると、あちこちに関所らしきものが見える。
「魔物の侵入を防ぐためだろう」
と、仲間の一人が言った。

目的の場所は酷く汚れた塔だった。
一歩踏み入れただけで、そこがガランドウな事が分かった。
あるのは外側の壁だけで、中は広い空間が広がっている。
その中心に、少女がいた。

「王様が魔王なのよ」
と少女が言う。

意味が分からなかった。
少女が塔の出入り口を指さした。
そこには、あの潰れた人らしきものが数体ぴょんぴょんと跳ねながら、こちらを見ている。
「彼らが見てる。この世界に逆らう人間を」

関所も魔物の侵入を防ぐためではなくて、民の移動を防ぐため。

この世界のどこにも倒すべき敵はいない。
それでも、何かを倒さなければいけない。
魔王ではない何かを魔王に仕立てて倒さなければ。
そして、王様に報告しなければ。

私たちが殺される。

そう、気が付いたときに目が覚めた。




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